【なぜ、ロンドン・マラソン女子に男性ペースメーカーか!?】

昨年までロンドン・マラソン主催者は、1999年11月22日東京女子マラソンで優勝した山口理恵の2時間22分12秒を女子マラソン世界最高記録として承認していた。

ロンドン・マラソン主催者、AIMSらは、高橋尚子のバンコックアジア大会で優勝した記録、直線が長すぎるという理由で認めない。イングリッド・クリスチャンセンの2時間21分06秒、テグラ・ラループがベルリンで樹立した記録2時間20分43秒、高橋尚子がベルリンで史上初のサブ20分2時間19分46秒、キャサリン・デレベの2時間18秒47秒の世界最高記録らも、男女混合レースと言う理由で一切承認を拒否し続けた。

女子単独レースが唯一"本物"レースとすべきポリシーだ。立派と言うべきだろう。混合レースのほうが、良い記録を出せるのは当然だ。ぼくも彼らの信念を高く買っていた一人だった。

が、この半年で状況が急変した。今年に入って、ロンドン・マラソン主催者の計画は、例年の如く女子トップ選手を先にスタートさせるが、男子ペースメーカーを付けることを知人から耳にした。

そこで長年顔見知りのロンドン・マラソン主催者のディレクター、デビット・ベドフォードの一連の動きをわたしは追って、その都度執拗に突っ込んだ。

デビットは1973年7月13日、クリスタルパレスで10000mを27分30秒8の世界新記録を樹立している。今年2月28日に他界したロンドン・マラソン創始者、メルボルン五輪3000m障害の優勝者クリス・ブレブレイシャーの後を継いだ男だ。

その背景には、ラドクリフがシカゴで自己の持つロンドン大会の世界記録をアッサリ更新。2時間17分18秒の世界最高記録を樹立した。これでロンドンが男女の世界最高記録を鼓舞した期間はわずか半年の短命だった。


デビット・ベッドフォード、

目に見えないところで大会主催者のライヴァル意識は過剰気味するもの。ロンドンはシカゴに奪い返された女子世界最高記録、皮肉なことに、英国陸上史上最高女子選手がライヴァルのシカゴで樹立したのが耐えられないのだろう。豊富な資金に糸目をつけず、なりふり構わず女子世界最高記録奪回が本音のところだろう。

3月22日、デビットはバーミングハムこう語る。「われわれは長年単独レース以外世界記録を認めなかった。世界最高記録承認を単独レース結果だけ承認するよう、IAAFに忍耐強く提示したが認めなかった。なにを"混合レース"であるか解釈するなら、女子選手に男子ペースメーカーをつけても理論的な相違はないはず胸を張って新アイディアを話した。

IAAFが混合レースの結果を承認している以上、女子選手に男子ペースメーカーを付ける規則の「穴」を突いたものだ。IAAFは「競技精神に反する」と異議を唱えたが、4月8日、ロンドンに押し切られ混合レースと認め、世界最高記録が誕生した場合、IAAFもこれを承認する方針を表明した。

スポーツモラル?そんなものがあればの話だが、ここでは省く。

デビットに『ラドクリフが男子ペースメーカーをつけて走る、話題つくりでスポンサーがつきやすいのか?』の問に『話題つくりは必要ない!』と一笑された。かれは地元の英雄に地元で世界最高記録を奪回するお膳立てを仕掛けた。

さて、ラドクリフが練習中に自転車と衝突、顎を脱臼、膝や肩に擦り傷をつけた。2週間ほどりんごも食べれなかったというが、一体どの程度練習、レースに影響するだろうか?男子ペースメーカーは16分台で走る。ラドクリフの出場料50万ドルとか?世界中の男女トップ選手が一堂に集結する。 

2003.4.10return to home 】【 return to index 】【 return to athletics-index