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【ハヌーチ驚異の世界最高新記録、2時間5分38秒】 |
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4月14日、世界最強選手が勢ぞろいしたロンドン・マラソンは、気温8〜13度、ほぼ無風状態の絶好の天候に恵まれた。男子は「ゲブレセラシエ効果」積極策が絶妙な拍車をかけ、ハリッド・ハヌーチ(アメリカ)が2時間5分38秒の世界最高新記録で復活、2位はポール・タガート(ケニヤ)、2時間5分48秒、3位、ハイレ・ゲブレセラシエ(エチオピア)、2時間6分35秒、昨年の優勝者アブデルカデール・ムアジズ(モロッコ)は20kmで転倒したにもかかわらず2時間6分52秒で4位、マラソンハイスピード時代の先端レースだった。
とにかくタフなレースだったが、神のお加護で最後に競り勝つ力が残っていた。今日の勝利は、本当に『夢が実現』しました。ここ2年半ほど足首の故障、不運が続き最悪の状態でした。特に、昨年のエドモントン世界選手権で途中棄権(レースの翌日、スタジアムでハリッドとサンドラにばったり再会した。ハリッドの足先は靴擦れで真っ赤。シューズが履けずサンダル履きが痛々しかった)、すっかり走る意欲を失ってしまった。応援してくれる人たちの期待を裏切って失望させたことが辛かった。
あそこに住むヘルマン・シルヴァ(バルセロナ五輪10000m6位、94、95年NYマラソン優勝者)の世話になりました。これが非常に良かったんです。ヘルマンの合宿所に滞在、かれの高地練習アドヴァイスで2000〜2400m以上のコースで十分に4週間走り込み最後の調整をいつものようにNYです」 元マラソン選手、ハヌーチのコーチ、エージェントも努める奥さんのサンドラは「われわれは今回の優勝はヘルマンのサポートに寄るところが多い。 ハリッドの問題は、適当に休養を取ることができない性格。練習、練習また練習するタイプです。ですからオーヴァーワークにならないように管理すること大切です。3月に京都ハーフマラソンに招待され、移動などで練習ができなかったのが適度な休養になりました。京都ではそんなタフなレースではないので楽に優勝、適当なリフレッシュもできたようです。これが非常に良かった。 やっと長い不運から脱出した」と大喜びだった。今年3月にわたしの友人でもあるヘルマン・シルヴァがささやかな引退パーテーを、トルーカにある『アシエンタ』(荘園)にある豪邸で祝った。電話してハリッドの練習振りを聞くと、 「ウチの若い選手は練習をどうしたらサボり強くなって金を儲けようと夢ばかり見ているが、ハリッドは全く逆。あんな練習を好きな選手も見たことはない。ロンドンで勝ってもおかしくないが、ハイレ、ポールもぼくのいい友人だから皆を応援した。ぼくとしては3人が優勝して欲しかったが・・・、とにかく凄いレースだったね」と、ハリッドのトルーカの猛練習振りを説明してくれた。
ぼくはハーフを63分30秒が理想的なペースだと思ったんですが、ハイレの10kmを29分30秒、ハーフを32分30秒のハイペース設定は、ちょっと速すぎるので自分のペースを守って走る予定だった。ところが、10kmをハイペースで通過しが、リラックスして案外楽に走れていた。周りを見るとライヴァル全員が一緒になって走っているし、勝つためにはこのペースで一緒について行かなければ勝てるチャンスはないと思い予定を変えて付いて行くことにしたんです。その時、チラッと一緒に走っているハイレ、ポールらの「大物選手」を見て、もしかれらに勝てたら、長年の夢が実現して最高の幸せだと、一瞬思っていながら走っていましたね。最後まで勝負はわからなかったが、ぼくの経験とメンタルのタフネスの差が出たのではないだろうか。 特に35kmから最後の数kmの走りは、ぼくのほうがレース経験があるし、あそこで勝負をかけるのが非常に重要なことです。これでやっとわたしを支えてくれた兄弟、友人、世話になったヘルマンらに、良い結果を報告できる」 ハイレ効果は偉大だった。ハヌーチ、タガート、エルムアジズ、ピント、ジファー、トラ、バルデイニらの、いずれの選手もハイレ出場がハイペースレース予感を生んでいる。トップ選手全員が口々に、過去最高の練習量を高地で消化してきたことを告白している。 これだけの選手を集めた主催者側の努力、完璧にマラソン適した天候、ハイペース設定、それに応えられるだけの選手の準備、意欲が、心理的な絡みが最高の積極性を促進できたからだろう。 小出監督はこのレースをこう分析する。「ゲブレならもっと早いペースでハーフを通過できるはず。そうすれば、スムースに後半スピードが乗る。また、カーブが38箇所(主催者は前半13、後半16、合計29箇所と発表)あるので、少なくとも1分はロスするし、石畳の道路なんかもあるのでこのコースは難しいね。ゲブレならベルリン、シカゴのコースで天候に恵まれたら2時間2分ぐらいで行っちゃうでしょう(アッハッハ)日本女子選手は高地練習を重点的に取り入れて10年。ちょっと数週間行った程度じゃあ駄目なんですよ。ゲブレ、ケニヤの選手なんか、2400mで生活してもっと高いところで練習するんですから、男子の指導者が本腰を入れて取り組まなければ、このハイスピード時代にとても追いつけませんよ。それにしても凄いレースだったね」 |
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