【世界にプロは存在しない!時代錯誤の陸連幹部の脅し】

「プロフェッショナル」を広辞苑で引くと、1.専門的。職業的。2.専門家。職業としてそれを行なう人。とある。陸上競技をすることによって、生計を立てている人を「プロ」と言う。これは難しい定義ではない。簡単明瞭なことだが、現実には陸上競技界(日本のスポーツ界ではと置き換えても良し)では、一般常識が通じないフシがある。日本のトップクラスの選手は、企業に所属している。だが、陸上競技の専門家であることを買われて就職しているのだ。かれらの仕事は、「広告塔」。なんらかのメリットがなければ企業は舌も出さないだろう。ところが、多少旧聞だが、2000年12月15日、「週間ポスト」に、帖佐陸連副会長は激白3時間、「高橋尚子は絶対にプロにはさせん!」と大きな見出しの記事が掲載された。「そもそも、陸上競技の世界に『プロ』 は存在しないんです。実は、日本だけではなく、海外のトップランナーもプロは一人もいない。お金を目的に走っている陸上競技者はいません。カール・ルイスでさえプロではない」と、シドニー五輪女子マラソンで優勝した高橋、小出監督に、先制パンチでプロ化阻止を試みた。頭の中にちょん髷が生えているような、いまどきこんな極度の時代錯誤の脅かしが世間に通じると思っているのだろうか。愚かさと軽薄さが浮かび上がってくる。

有森裕子が 96年アトランタ五輪後、「陸上競技を続けながら、CM出演や講演などの自由な商業活動をしたい」と「プロ宣言」をした。この爆弾宣言は、時の流れも関知せず、太平を夢うつつな陸連、JOCの年寄りが腰を抜かさんばか りに驚いた。かれらの怠慢をそっちのけで右往左往。女の勇気あるアイデア、行動は、男ばかりの体躯系縦組織に反旗を翻し、「化石化した老害体協」に一矢を放った。結局、陸連、JOCもいろんな形で折れ、競技者規定を変えている。その経験を忘れて、陸連副会長は高橋に、「国民栄誉賞をもらっている選手が、世の中の批判を浴びるような行動を取るべきではない」と言っているが、誰もプロ化に批判をしていないって!!笑っちゃうのは、CM活動などを認めるよう競技者規定を改定しても、プロと宣言しなければ選手登録を認めていたらしい。有森は独立 した事業主になった形でリクルートのクラブを通じて競技者登録をしている。CM出演料などについても、その都度話し合いの中でやってきた。そんなわけのわからないことで時間を潰したため、有森は「稼ぎ時」を逃してしま った。高橋の金メダル獲得で、銀メダリスト有森の価値が急落したのは当然。CM出演、講演などの声が掛かるのは少なくなったろう。一層のこと、アメリカ国籍を獲得、次回五輪に日本代表は難しいだろうから、アメリカ代表の座を狙ったらどうだろうか。今からでも遅くはないだろう。これマジな話し。このコラムを書き始めたら、「高橋尚子の社員のままプロOK、高橋の申請受け入れ陸連が規定改訂」のニュースが飛び込んできた。「エッ!」と驚 く。3月20日に開かれた陸連の理事会と評議委員会で、高橋の事実上プロ化申請の受け入れた競技者規定の改定 案を承認した。帖佐陸連副会長の舌の根も乾かない間に、恥ずかしげなくも、陸連がやっと渋々高橋の要望を認め たのだ。日本陸連は、有森、高橋らの女性マラソンの活躍に支えられ、そして、彼女らの勇気で変わろうとしてい る。

シドニーで金メダルを獲得した高橋尚子
2001.4.9.return to home 】【 return to index 】【 return to athletics-index