【世界の陸上界はスター不足】
世界の陸上界はスター不足。
1500Mの世界記録保持者、エルグル ージュ
世界の陸上界はスター不足

エドモントン陸上世界選手権大会が目の前に迫ってきた。世界のトップ選手は、欧州グランプリ大会で最後の調整に余念がない。ローザンヌ、パリ、オスロー、ストックホルムなど、伝統的な欧州主要陸上大会が今ひとつ盛り上がりにかけている。世界でも陸上競技会でダフ屋が出るのは、世界広といえオスローの“ビースレット”だけ。それが今年は観客席に空席が目立ったのには驚いた。重症のポスト五輪後遺症ではない。観客は正直だ。ドーピング問題、記録の低下、これといったスター選手の存在が薄いだ。金を出してみる気が起きないからだろう。“世界最速の男”モリース・グリーンがいても、かれは到底カール・ルイスにはなれそうにもない。左腕に刺青、体を左右にゆすり歩く。大きな舌を突き出してベロベロ“アカンベー!!”フィニッシュスタイルではどうしようもない。よくも舌を噛まないか、こっちが心配する。

今年のグリーンはレース直後に、場内を一回りして出血大ファンサーヴィスをする。観衆にすこぶる愛想がよいが、そう簡単にイメージチェンジはできないだろう。マリオン・ジョーンズは、あのかわいらしい笑顔でかなり得をしているが、最近離婚した前夫、巨漢ハンターのドーピング事件でイメージは急落。シドニー五輪は涙の記者会見が空々しかった。今年の彼女の丸い顔が、なぜか一回り小さく感じられる。観衆も、欧州ではジョーンズに昨年ほどの熱狂的な応援がない。200,400mはミカエル・ジョンソンが引退。その後継者は見当たらない。800m、キプケターが持病で今季絶望、このままもしかすると引退かもしれない。若手の数名の有望な選手がいるが、記録はまだまだやっと43秒台。エルグルージュが1500mを走るのは今期が最後。来期から5000mに転向とか。エルグルージュの凄さは実証積みだが、強いばかりが“スター”になるとは限らない。80年代の英国勢中距離選手の活躍は、実力とともに華々しかった。ところがその後、アウイタ(モロッコ)モルチェリ(アルジェリア)、エルグルージュらのマグレブ、ケニヤ選手らの台頭。この種目に滅法強いが人気は薄い。彼らの国民性もあるだろうが、閉鎖的で暗いのが難点だ。5000,10,000mのライヴァル、ゲブレセラシエ、タガートらの二人の勇姿が見えない。ゲブレセラシエは足の手術から完全に復帰していない。タガートは、秋マラソンで世界記録挑戦に全力を傾けているといわれる。この二人を比べると、ほかの選手は小粒だ。フィールド種目の記録低下は目を覆うばかり。棒高跳び、走り幅跳び、走り高跳び、ハンマー投げ、砲丸投げらの、厳しいドーピング検査だろうか、いずれの種目も記録急降下。ただし、槍投げのズレズニー、三段跳びのエドワーズの活躍が特筆されよう。女子は、100mのジョーンズ(?)ヴェテラン走り高跳びのババコワが2mを越えて奮闘している。それ以外の選手、印象が薄いのは残念だ。

為末。ゴールデンリーグ・パリでのゴール後
2001.7.15.return to home 】【 return to index 】【 return to athletics-index