【素晴らしい鹿島スタジアムの奇妙な雰囲気

G-F,6月2日、ナイジェリア−アルゼンチン戦取材、0−1(0―0、0―1)、観衆34050人 日曜日なので東京の電車が幸いに混まない。"レールパス"を使って山の手線で東京駅へ。ここから特別電車で鹿島まで。混雑を予想して、早くきたつもりだがすでにグリーン車まで満席。2時間立ったまま鹿島まで。車内は家族連れのアルゼンチンファンで満員。国の経済が破綻状態なのに、あるところはあるものだと感心していると、どうやらアメリカ在中のアルゼンチン人らしい。それで納得した。

隣の若い英語、スペイン語を巧みに操る男二人、電話で闇の何十枚の切符を動かしている様子の会話だった。

到着した鹿島駅前が大混雑していたが、ここはサッカーファンの誘導はお手の物。慣れているのだろう。ドット電車から吐き出されるファンを、徒歩、バスに乗るグループに、次から次へと捌いてしまう。無料バスに乗ると乗客全員座ってスタジアムへ。バス停を降りて、歩きながらスタジアム前のファンを撮影する。

これほど完備したサッカー専用スタジアムは"世界広し"と言え、数は少ないだろう。施設の充実さ、観客もフィールドに近く、プレーがすぐ側で見られるのは素晴らしい。ところが、このスタジアムでありながら、この日の観客は、ちょっと違った雰囲気で取材するにも調子が外れだ。

欧州や南米のように、なにか気に入らないと観客席からライター、大きなコイン(これは危ない!)など、物がフィールド内に降ってくる。一触で感情が爆発しそうな殺気立ったテンションの高いファンの存在は好きではない。しかし、この日のスタジアムの雰囲気は観劇のようにおしとやかなもの。観客はそれなりに世界のトップレヴェルのプレーに感動、緊張感をエンジョイしている様子だったが、終始、静かに着席、感情穏やかに観戦していた。

多分、日本人の多くの観客は、日常の世界で情感を豊かに広げ、高揚する場も少ないのだろう。急に、その日になって燃やそうにも点火できまい、熱くはなれまい。下手にやれば白けるだけ。伺った見方をすれば、フィールド内の選手と観客の一体感は全くなし。フィールド内の選手は、奇妙な、勝手が違う空間に戸惑っているようにみえる。試合も、優勝候補筆頭のアルゼンチンが冴えない。それでもバテイが、CKからヴェロンの右足から放たれたカーブボールを横顔に当ててやっと得点した。いつもの燃えたたせてくれる「雰囲気」がない。ナイジェリア監督は若い選手器用が大成功した。重圧に耐えてアガホア(20才)、オグベチュ(17才)のFW、イケデイア(21才)らが遜色ないプレーで善戦した。

お通夜のように静まり返っているスタジアムの一角、わずか数十名のアルゼンチンファンがゴール裏スタンドの手摺に立って大騒ぎ(?)。その裏で行儀良く座席の観客は前が見えない。これを、警備、"POLICE"と背中に書いてある男達が束に掛かっても取り締まれない。全く言うことを聞かない。言っても聞かない外国人には屹然と言えないのもだらしない。すっかり舐められている。警察、警備の人達が常識的な範囲での適切な判断ができない。こんな滑稽、奇妙な光景を見たことがない。これが日本人だったら、大変な剣幕で怒り出すだろう。さぞかし、アルゼンチンファンの後方の席に座っていた観客は、日本の警察、警備のだらしさに憤慨、失望を覚えたことだろう。それとも、まあ、外国人だから言いかア〜!?で終わり?

2人のアルゼンチンサポーターが、スタジアムの外でチケットを中学生から引っ手繰って逃亡したと、新聞記事を読んだ。

ここでも報道陣の数は少ない。外国からの記者、カメラマンの取材者数は、日本、韓国二カ国開催のため取材経費が高いために少ない。スナック販売所の食べ物は、"不味い、高い、量が少ない"で悪評だ。


数人のナイジェリア人が取材にきていたが、友人のオノチエはまだ來日していない。かれらはなにも取材している様子はない。金持ちか、政府の役人だろう。ぼくをラゴスで見て覚えていた人がいた。早速、東京のどこでなにを買えるかショッピング情報収集に熱心だ。他の1人は自動車の部分品をどこで購入できるか聞いてきた。

G-F,イングランド対スエーデン戦、1―1(1―0、0―1)、観衆52721人 イングランド対スエーデン戦は、イングランドが先取点を獲得したが、後半、スエーデンの押されて同点を許す。イングランドは暑さ、湿気で走れないとか。イングランドは対スエーデン戦に34年間3敗8引き分けで勝ち星なしと相性が極端に悪い。ベッカム主将は「負けてはいない。前半、非常に好いプレーができただけに、引き分けという結果は残念だ」と、コメントを残す。

G-B,パラグアイ対南ア戦、釜山、2―2(1―0、1―2)、観衆25186人 パラグアイの出足は良かった。2得点先取したが、その後に攻撃の手を止めて引いてしまった。行くしかなくなった南アが両サイドから制圧し始める。マークが弱くなると遠くからクロスを放り込む。あと数分辛抱だった。抜けてきたズマを倒したGKがPKを取られて勝ち点を失う。後半2点を南アに許して引き分けた。

G-B、スペイン対スロベニア戦、光州、3―1(1―0、2―1)、観衆28598人 スペインがスロベニや相手に好発進。ラウール、バレロン、ヒエロのPKで3−1の楽勝。スペインは50年大会4強入りした以来、52年ぶり緒戦の勝利。前半は相手の堅い守りに手を焼き、前方が塞がると引いてしまう悪癖も出た。攻撃陣が狭いスペースに押し込まれ、窒息しそうな展開。それに風穴を開けたのがラウール。トラップと足首の返しだけでマーカーを外す。デイエゴトリスタンに縦軸に打ち込むクサビのボール攻撃は、中に入れてから、一旦外に出して中に戻す多彩のパスワークは美しい。

2002.7.9.return to home 】【 return to indexreturn to football-index