【地元ファンから強烈なブーイングの洗礼を浴びた中田のプレー】

中田が深い位置でボールを受ける。ボールを出す相手、スペースを眼で探すが一瞬の躊躇。相手のマークの寄りが素早い。中田が横走りに逃げる。口笛交じりのブーイングが「ドッ」と巻き起こる。中田は詰まって苦し紛れに切り返す。「早く思い切ってプレーしろ!」と、中田のプレーに苛立ち叱咤する観衆。ホームスタジアムのピッチで、パルマ中盤の司令塔中田がなす術もなく逃げ腰のプレーは地元ファンが許されない。そんなシーンがしばし展開された。中田のふてぶてしい表情、あの典型的なボクサーのような膨れ上がった額から腫れぼったい目が引き攣った。


調子が上がらず、天を仰ぐ中田
「ローマで1年間ベンチに座っていた選手を獲得したのは、パルマが中田は金蔓になると踏んだからさ。スクデト獲得なんかとんでもない夢物語。中田がパルマで司令塔としてプレーするポテンシャルはない。2部転落だけは避けて欲しいね」と、パルマの駅前から、スタジアムまでタクシーの運転手が捲し立て、すでに今シーズンはあきらめの表情。中田の評判は、この日決勝点を奪って今シーズン初勝利を上げたが、完全に不信に陥った。

中田の全試合を取材する、あるイタリアの知人は「中田のプレーはとても満足できる内容ではないが、それでも今日の中田は今季最も良かったプレーと言えるがね・・・?」中田はサッカー選手になって、かつてない危機に直面しているのは間違いない。クラブ一丸になって、中田―パルマシステムを試みてきたが、ここにきて実現が崩れかけてきている。

中田の潜在能力、要するに、かれはマラドーナ、ロナウドではない。人より際立っての素質、身体能力(並外れたスピード、体力)、テクニック、センスなどは決して非凡とは思えない。あの程度の選手なら大勢いるだろう。強いて言えば、中田の戦術眼が優れている。しかし、その場合は回りの選手が巧くコーデイネートしてくれなければ、中田の存在が生かされないが、中田はこのままでは孤立して行く。

今季初勝利後の記者会見に姿を現さず、地元ファンやジャーナリストとのコミュニケーションを採らず、中田の態度に疑問を投げかける。中田はどこに行こうとしているのだろう。
2001.9.27.return to home 】【 return to indexreturn to football-index