
ハットトリックを決めたオーウェン
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ドイツは負けるべきにして、イングランドに1-5で大破した。一見、ドイツ選手は頑強な身体は持ち合わせているようだが、肝心な身体能力、スキル、戦術、もちろん、フレアーなどはどこにもなかった。いわば、木偶の坊の集団。その上「ゲルマン魂」の戦う姿勢も薄れ、国内で対イングランド戦は36年ぶり、屈辱の歴史的な敗北を記した。シュール、ジェラミらの中盤でボールキープ能力のある選手が故障で欠いたが、例え、2人が出場できても大勢は変わるとは思えない。ドイツは勝てば予選グループ1位通過できたのが、失うものは大きく、プレーオフを戦わなければならない。予選突破チャンスが難しくなってきた。そもそも「肝心の自覚」を失わせたのは、ワールドカップ予選緒戦のギリシャを難なく破り、第2戦目を運良く0-1で宿敵イングランドにロンドンで勝ったことから始まる。これで相当に気を好くした。国内メデイアはドイツの強さを煽り、20数年ぶりにバイエルンが齎したチャンピオンズリーグ優勝は、ドイツ選手に過剰なまでの自信(勘違い)が生まれてきたのも不思議ではない。あのドイツにしても、冷静な状況分析を怠ったのだ。これは日本メデイア、風潮にも当てはまる。感情を剥き出しにトルシエ非難を展開した報道体制から、ユース世界選手権から風向きが変わり、アジアカップで優勝した途端、嘘のように消滅した。重心を低くして客観的な分析を怠らず、結果だけの判断は危険だ。ドイツの対戦相手はこれといったチームは見当たらず、5勝1引分け無敗で予選を戦ってきた。一発勝負の欧州選手権で早期敗退、あれほどまでに徹底的に弄ばれた対フランス戦(2001.3.31掲載、“ドイツ戦に見る新生フランスの実力”を参照)の教訓を忘れず、なにも改善策をとらなかったフェラー監督は更迭されても驚かない。イングランドの若手軍団は、ドイツコンプレックスを持たない世代だ。ドイツDF選手はベッカム、オウエンの力を過小価したのだろうか。若き主将のベッカムはノーマーク。自由なスペースで自由なアクション。ベッカムのコンパクトな振りから、絶妙な正確無比のロングパスが前に飛ぶ。オウエンのシャープな鋭い反応、ダッシュは一瞬でDFラインの背後を刺す。止められものではない。オウエンは“ハットトリック”を完結した。21歳のMFジェラルドのシャープな活躍は、ドイツの責めを切り崩し、一挙に攻勢に転換、自らも豪快なショットを決めた。 |
今年の始め、キーガンから受け継いだスエーデン人のエリクソン監督。就任当時から、閉鎖的なイングランドメンタリテイの槍玉に挙げられた。FA外国人監督招聘決定を「国賊」とまで罵倒。「サッカーの母国イングランド監督に、外国人コーチに任せられるか!」と詰られた。しかし、外国人監督であるがゆえ、豊富な経験と冷静な情報分析でエリクソンは新旧世代交代に着手、青息吐息のイングランドを短期間で蘇生に成功した。UEFA杯を制したリバプールの原動力、オウエン、ジェラルドらも、外国人監督、フランス人の強い影響がある。次の日、イングランドのタブロイド紙「信じられない勝利!」と、一面を飾った。そうかといって、イングランドが素晴らしいチームと手放しで喜んでもいられない。特に、DFラインは弱点。両チームともミスが多く、大雑把な試合だった。
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