アフリカ選手権、ワールドカップ2大出場権獲得目標達成】

バファナ バファナ連続出場に王手を懸けた

南アフリカ共和国代表チームは残り2試合、グループ下位チームから一点獲得すれば、決勝大会連続出場権を手中する。早ければ、7月1日のアウエー対ブルキナファソウ戦で、カメルーンと同じ日に、世界で最も早い予選通過国となる可能性が濃厚になった。

アフリカ選手権、ワールドカップ2大出場権獲得目標達成

「バファナ バファナ」とニックネームで親しまれる南ア代表の背景に、日本代表チームと多少類似する過去があると言ってはおかしいだろうか。両国とも、ある切っ掛けで大きく脱皮を計った。南アは非道の人種差別政策のため、IOC,FIFA加盟国から追放されたのが1970年。スポーツ国際交流が解禁された91年まで、20年間鎖国状態が続いた。南ア国内サッカーリーグは、有色人種が好のみ、限定された環境でそれなりの発展をしてきた。ところが、バルセロナ五輪からスポーツ国際交流が解禁され、一挙にかれらの思考世界が急激に拡大された。日本も少し遅れて、爆発的なエネルギーで、日本のプロサッカーリーグが誕生。環境は急変した。要するに、ローカルなサッカー観から世界的な視野へわずか10年未満で短期間で根本的に変革した事実がある。そして、念願のワールドカップ出場を果たし、大きな発展を遂げてきた。
南アが国際舞台に復帰、1996年地元開催アフリカ選手権大会で優勝、勢いを駆って前回ワールドカップ決勝大会に初出場した。緒戦対フランスに0―3と大敗したが、デンマーク、サウデイアラビアに引き分ける大活躍を見せた。この活躍は国内に強い影響をフィードバックさせた。ここまでは良かったが、最近のバファナ バファナは、世代交代の難しさを抱えている。名古屋グランパス監督経験のあるモザンビック生まれ、ポルトガル/モザンビック両国籍を保持するカルロス・ケイロシュ(48才)が、すでにワールドカップ予選が始まった2000年9月15日就任した。月給14万ランド、契約は2002年8月まで。アフリカ各国の代表監督は、4年に一度、2002年アフリカ選手権予選、ワールドカップ予選がほぼ同時進行するので指揮を取らなければならない。口煩いメデイアも『レインヴォ―ネーション』(虹の国家)誕生以来、フィリップ・トルシエ二人目の外国人監督が、アフリカ選手権予選最終戦を待たずにして3戦無敗で出場権獲得決定。就任以来5勝2敗2引き分けと固い試合振りは、比較的に好意的に受け入られている。ちなみにトルシエは、勝ち星なしの4引き分け2敗だった。南アは、ワールドカップ予選組み合わせをマラウイ、ジンバブエ、ブルキナファソウ、ギニアと一緒のグループ。強豪ギニアは予選途中で大統領が直接協会加入、FIFAは予選参加取り消しを決定したため、対ギニア戦結果は無効。そのため南アは、比較的楽な組み合わせになった。最大の難関とされていた緒戦の対ジンバブエ戦、2000年7月9日、ハラレの試合で南アバックリーの2点目のゴール後、騒ぎ出した観衆に警察が催涙弾を発砲。蜘蛛のこを散らすように満員の観衆が出口に殺到したため12名が圧死した惨劇を起した。試合は中断。因縁のライヴァルホーム戦では、無難に2―1で勝った。残り2試合で1得点獲得すると、早ければ、次回アウエーの対ブルキナファソウ戦で、本大会出場を決めることができるだろう。南アの深刻な問題は、前回ワールドカップ出場経験者の高齢化だろう。フィレモン・マシンガ(FW,32才、バリ)、ジョン『シューズ』モショウ(MF,36才、ブルサスポー、トルコ)、ヘルマン・マカレレ(MF,32才、所属チームなし)、アンドレ・アレンセ(GK,34才、サントス)らの活躍に、まだ少なからず依存するからだ。また、今季チャンピオンズリーグ準決勝進出を果たしたリーズの主将、バファナ バファナ主将の国民的英雄ルーカス・レデベ(DF,32才)の故障からの復活も懸念される。しかし、ワールドカップまで、1シーズン期間があることを考えれば、代表選手の顔ぶれも多少変わってくるだろう。

国際経験豊かな新旧入り混じったチーム

ケイロシュ監督は、ヴェテラン復帰を唱え、外国でプレーする選手主体チームを構成している。対ジンバブエ戦に国内リーグ戦から召集した選手は、カネメイヤー(DF,23才、アヤックス、ケープタウン)、エヌザマ(MF,27才、カイザーチーフ)、マカレレ(MF,クラブなし)、ノンベッテイ(FW,24才、カイザーチーフ)らの、わずか4名だけ。監督の目に国内リーグ戦手は、一段低いレヴェル選手と映る。国際試合には、高いレヴェル、熾烈な試合経験が不可欠な要素。それが国内リ―グ選手には、あきらかに圧倒的に不足している。南ア国内リーグはアフリカ最高のリーグ戦だが、外国クラブで活躍する選手のギャップを埋めるのはもう少し時間が必要だ。前回ワールドカップメンバーと変わりばえしない布陣を取らざるを得ない苦労がある。と言っても、選手の質、経験が前回とは比較にならない格段の進歩を遂げているのが強みだ。4年前、外国クラブでプレー経験選手はいなかった。が、現代表選手はワールドカップ、国際試合、外国クラブ経験豊富のため、プレー内容、自信が格段に違う。それらを巧く使う監督の手腕が掛かっている。それが現在非常に巧く絡んで好成績を上げているといえよう。そして、南ア選手の評価が国際的に高まってきた。彼らを代表に呼び戻すことが、最近では苦労する南ア協会の悩みでもある。最近の傾向として、南ア選手は、ここ4年間、驚く数の南ア選手が外国クラブで活躍をしている。その数は13ヶ国、35人の選手がプレー。今後さらに外国移籍選手は増加する傾向だ。一方、アフリカ大陸選手は南アリーグでプレーするのが夢。南下してくる選手の後が絶えない。南アリーグで活躍するか、才能ある選手はさらに欧州クラブと契約する段階を踏むようだ。
4月25日、南アはイタリア相手に親善試合を組み、遊ばれて0―1で敗戦。が、この試合で好セーブ連発したヨハン・フォンク(GK,30才、ヒーレンフィーン)は、キャップ数18回と少ないが、ほぼ正ポジションを獲得しただろう。南アのDF人は、堅い守りで失点は少ない。基本的には4―4―2システムだが、ホームでは3―5―2、豊富な攻撃陣を活用するシステムを取るケースがある。不動のセンターバックは、レデべ、ピエール・イサ(25才、チェルシー)、故障で戦列を離れているマーク・フィッシュ(27才、チャールトン・アスレテイック)もいる。今季、レデベは故障で不本意なシーズンを終えた。ソエト出身、父親がトラックの運転手。人格者と親しまれ、優れたキャプテンシーを発揮する。所属先のリーズと、終身雇用契約を結んでいる南ア最大のスター。かれの右はイサ、マルセーユから今季プレミヤリーグに移籍。サイドバックは、しばし速攻に加わるフランク・シューマン(26才、リングビュー、デンマーク)、アーロン・モコエネ(20才、ゲルミナ・ビールショット、ベルギー)、その他に、ヤコブ・レクゲト(27才、ロコモテイフ・モスコワ)らの変り種も控えている大型の国際経験者が揃った。これだけの経験豊富なDFの人材は、アフリカ大陸一安定度が高いラインだ。しかし、問題は右中盤だ。対ジンバブエ戦の中盤はヴェテラン選手で固め、新顔は右サイドをスブシソ・ズルマ(26才、FCコペンハーゲン)だけ。その他の中盤にヅミサ・エヌゴベ(28才、アンカラグク、トルコ)、デロン・バックリー(23才、VfLボーホム、ドイツ)、36才とキャリアの長いモショウ、現役最高代表歴67回を誇るへルマン・エムカレレは、信じられないことだが現在所属クラブなしだが、まだまだヴェテランの活躍を必要とする。左サイドには、15才で欧州に飛びだしスペイン、イングランドで武者修業したクワントン・フォーチュン(MF,23才、マンチェスターU)がいる。南ア最年少代表記録をもつ逸材。俊足、トリッキーな左足から放たれるクロスは正確にFWに当てる。所属クラブ同僚のギックスと比較される。シドニー五輪でも、しばし日本選手を翻弄した。しかし、右サイドが攻守にやや劣る。いずれにしても、中盤選手は今後いろんな形でトライを繰り返し、さらに来年そうそう開催されるアフリカ選手権で最終的に選手選考を決定する。FWの選手は、不動の主将レデベが故障で欠場、主将を務めるショーン・バートレット(28才、FW,チャールトン・アスレテイック)。スイスから今季半ばにイングランドに貸し出された。攻撃能力、センスは抜群。かれの結婚式に当時の南ア大統領のネルソン・マンデラが出席した。もう一人はケープタウンのスラムからスターに踊り出た『ベニ―』マッカーシー(FW,23才、セルタ・ヴィゴ)の存在だ。アヤックスで才能を磨き大活躍、しなるような柔軟な動き、シャープな得点感覚の持ち主。天性のストライカーだ。エリアAのバリでプレーするマシンガも心強い。注目すべき攻撃の中軸になる左からのサイド、正確なクロスからのFW2人の得点能力は半端ではない。前回のアフリカ選手権で活躍したシヤボンガ・ノンベッテイ(FW,23才、カイザー・チーフ)、ブラデリー・オーガスト(FW,22歳、リングビュー、デンマーク)らが控えているが、前記の3人を超えることは難しいだろう。
いずれにしても、この4年間のバファナ バファナは、周囲を取り巻く環境の変化、経験から一回り大きく成長した。少なくとも予選突破を目標に掲げている。

(↑学研・ストライカー2002年8月号掲載)
return to home 】【 return to index 】【 return to published articles-index