ロンドン五輪で大活躍したオランダ史上最強女子短距離選手「ファニー・ブランカース・クン」という選手がいた。彼女の出身地で開催される通称『ヘンゲロ大会』は、欧州陸上シーズン開幕を告げる。この大会は、オランダの元長距離の世界的ランナー、ヨス・ヘルマンスのマネージメント会社が主催するために、ハイレ、メズゲブ、ワミらエチオピア長距離選手の好記録が出ることで有名な大会。パリから友人の車で、まだ高速道路には車の少ない時間に北に向かった。ヘンゲロはアムステルダムから東へ電車で2時間。パリから車で所要約6時間。昨年は、現場に着いたら強風で大会は中止?とんぼ返りした苦い経験もある。陸上大会と、雨天の取材は最悪条件。今年も今にも雨が降りそうな空模様。車に揺られながら、天候のことが念頭から離れない。
やっと到着、直ぐに女子ハンマー投げを撮影しようかと思ったら、すでに競技は終っていた。シドニー五輪優勝者のカミラ・スコリモウスカがいた。再会を喜び、結果を聞くと、67.45m、2位のコセンコーワ(ロシア)に2cmの差で勝った。と、相変わらず屈託なく笑った。この大会総てのフィールド競技は新ルールを適用。棒高のケースは、試技は2回、投擲は全部で4回のみ。競技のテンポが早い。今年の大会の目玉は、ワミ、デンボバ、ミキテンコら女子5000m世界記録への挑戦だ。過去、ワミは2度に渡って、5000mの新記録に手が届きそうだった。しかし、気温は15度ぐらいでバックストレッチでは向かい風。ワミの夫、ヨスが大声で指示したが、ワミが不調でスピードが上がらない。最後にはワミは簡単に追い抜かれ5位、優勝は若いアデレ(エチオピア)が14分51秒67の低調な記録に終った、
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本格的な欧州陸上競技シーズン開幕
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男子1万mではメズゲブが先頭になって大勢のエチオピア、ケニヤ勢を引っ張る。しかし、今年は「Mr.Hengelo」ことハイレの姿が見えない。メズゲブが勝っても27分22秒30では寂しい。カマテイ、トラが続く。女子3000障害は、世界記録保持者イロク−カサンドラ(ルーマニア)が、9分45秒12で優勝。昨年まで1500から3000mを走った『スイスのプリンセス』ウエイヤーマンが障害に種目を変え9分57秒06でゴギデア(ルーマニヤ)とタイ記録、2位を分けた。男子800mは、デイユベ(ボツワナ)が、五輪優勝者シューマンを押さえて1分44秒69で優勝。シューマンは1分45秒28、ちょっと不満そうだったが『この時期なら良い記録だ』と言った。男子3000m障害は、R.コスゲイ、バラマサイの2人のレース。記録は低調の8分15秒43.棒高跳び五輪優勝者のヒソング(アメリカ)も5.65mで優勝したものの、なんとなく浮かぬ顔だった。いずれにせよ、シーズンは始まったばかり。これから日ごとに選手は調整を進めて行くだろう。
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