【ベケレ男子史上初の2冠達成、
昨年の世界クロカン選手権記事に、ベケレを「ハイレ・ゲブレセラシエ二世誕生!」と書いたが、予想より遥かに早くやってきそうだ。「今シーズン、昨年12月にハイレに負けて2位になっただけ。 レース前から2冠獲得の自信がありました。

スタート時点から、リチャード・リモ、チャールス・カマテイ、ウイルバーフォース・タレルらのケニヤ勢がチームで走ることは判っていたし、ジョン・ユバ(タンザニア)も飛ばすことは予測できた。特に、ユバと走るのは初めてではないし、かれの作戦を良く知っている。

かれには付いて行き、最後に抜けば勝てると思っていた。調子は良かったので、スパートするチャンス待っていた」ベケレの言葉どおり、最終回のベルと共にスピードアップ。ユバが次第に遅れ出し、ベケレは34分52秒で史上初の2冠を達成、6.5万ドルの賞金を獲得した。 この賞金の使い道を聞かれると「車を買う予定だ」と答えてにっこり笑った。2位のユバは34分58秒、6秒差。3位になったタレルは、ユバに遅れること22秒。

ベケレの強さをタレルは「われわれのチーム作戦が全く通用しない。20才(1981年6月20日生まれ)の若さとは思えない稀有なランナー、恐るべき潜在能力の持ち主」。剛毅な知人のケニヤ陸連ヘッドコーチ、マイク・コスゲイ(50歳)は「ケニヤの5000,10000m世界チャンピオン、クロカンスペシャリストが束に掛かって、あらゆる手段でストップ・ザ・ベケレ作戦を敷いたが、彼一人の力で屈辱的な完敗をした。He annihilated us The boy was just too good for us!!」と、言わしめた恐るべきパワーだ。

ケニヤは団体で優勝、辛うじて面目を保った。 1年前、アジスアババでエチオピア陸連長距離名コーチ、W.コストレ博士が、競技場内で一人練習しているベケレを指して「チリで開催されたジュニア世界選手権5000m2位になったが、あれは天性の素質の持ち主だ」と、太鼓判を押したのを覚えている。

ベケレは首都から南東250kmのアルシ地方の小さなべコジ村、デラツ・ツル(バルセロナ、シドニー五輪女子10000m優勝)の村から5kmの距離にある寒村出身。この辺は3000mに近い高地で、ハイレ・ゲブレセラシエ、ゲザヘネ・アベラなど、素質豊かな選手を輩出する宝庫とでも言えよう。

ベケレが本格的に走り出したのは97年から、首都で小さな家を借りてランナーの弟と一緒に住みながら、練習後 夜学中学に通っている。


エドモント世界選手権は、昨年のローマ・ゴールデンリーグがエチオピア長距離選考会を兼ねたレースだった。ところが腹痛でまともに走れず、エチオピア選手4位になったため、代表から外された屈辱を味わう。今年の欧州クロカンレース4戦全勝、見事に復活した。ベケレの潜在能力の片鱗を、今シーズン屋外レースで見ることができるのが楽しみだ。