【"皇帝"に立ち向かったヤングパワー】

 

数年前、ヘンゲロGP(オランダ)は、強風のため中止。急遽トンボ帰りでパリに戻った経験がある。

今年もまた雨を心配したが、大会二日前から一足飛びに夏がやってきた。気温も急上昇して30度!とかくこの大会、半端なことが嫌いらしい。

ヘンゲロGPは、欧州屋外シーズンGP緒戦。長距離世界記録を続出することで名を知られている。

ハイレ・ゲブレセラシエ自身、ここで4つの世界新記録を樹立している。

今年のレースの焦点は2つ。 エチオピア勢の熱い新旧対決と世界新記録。 "ハイレ皇帝"より10才若いクロカン世界選手権2冠2連勝の偉業を果たした偉才のケニシア・ベケレ(20歳)が平地トラックで初走り。

そのベケレをエチオピア選手権で5000で競り勝ったシレシ・シヒナ(20歳)らが、一丸となって26分19秒への世界新記録の挑戦だ。

これらの"Young Guns"が"ハイレ皇帝"に対してどこまで戦えるか?

19時15分スタート、陽はまだ高い。放水車がトラックに散水したぐらいでは焼け石に水。

にもかかわらず、自信満々の3選手ハイレ、ベケレ、シヒナらが一塊になって飛び出した。ラップは64秒のハイペース、他の選手を完璧に圧倒。

日本選手の二人は2周目ですでにドン尻。

3000mまでペースメーカーがついたが、その後、ハイレが積極的に先頭に立って若い二人を引っ張る。

 

ハイレが先頭で通過した4000mは10分39秒72。5000mをシヒネが13分22秒72で通過したが、暑さのため次第にペース落ちる。

ベケレはなかなか前に出ない。後半、シヒネが7000mでラップを切ったが、ほかはいずれもハイレが2人の牽引車。最後の2000mで世界新記録の夢は消えた。

しかし、ハイレのプライドが許さなかっただろう。ハイレは常に王者の貫禄と誇りで勇敢に先頭を切った。勝負に徹する小細工を見せないのが素晴らしい。

残り120mベケレの若さのエネルギッシュなスパートがハイレを抜き去った。 優勝タイムは26分53秒70.初10000mレースが今季世界最高記録とは悪くはない。

ハイレもこのままで引き下がらないだろう。”なにをしなければならないかわかった”と敗戦のコメント。

あの暑さの中をものともせず、26分台を記録した3選手に拍手。ハイレの後継者はまだ20歳の怪物選手が二人も続く。

 

2003.6.4.return to home 】【 return to index 】【 return to athletics-index