一方、女子は初マラソンのポーラ・ラドクリフがツル、土佐、チェプチュンバを全く相手にせず、15kmからゴールまで完全独走。一度も振り返ることなく、大方の予想を裏切ってブッ契りで優勝。2時間18分56秒、歴代2人目の18分台を記録した。アルバカーキー高地合宿成果が、世界クロカン連続優勝、ロンドンの2冠を制した。
男女の快挙は高地練習「自然ドーピング」の賜物であることは言うまでもない。
10年前の日本女子マラソンは、男子勢の陰に隠れて「お遊び」程度に扱われていたが、既にそのころからいち早く、日本女子マラソン選手はボルダ―、昆民などの高地練習を開始していた。先見の妙があったというべきだろう。有森裕子、浅利純子、鈴木博美、高橋尚子らの世界に通用する選手を生んできたのはいずれも高地練習の成果だ。
そのころ私は宋兄弟、伊藤国光、瀬古監督らに「なぜ」高地練習をしないのかと聞いたことがあるが、応えは決まって「経験不足、選手の適正、時間」がない。「平地」でも十分対処できるかれらの自負か判っていても決断がつかないのだ。
小出監督に同じような問いをすると、男子監督の「努力不足」を指摘する。数週間高地練習しても良い結果は出ないという。高地に腰を落ち着けて、3000mで走るぐらいにならないと本物ではないだろうという。さて、誰が率先してやるだろうか?そうでもしない限り、日本男子マラソン選手が世界と互角には戦えないだろう。
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