【ケニシア・ベケレ、10000mデビュー戦で"皇帝"ハイレを破る】

「ゴールするまで、ハイレに勝ったとは思わなかった。かれと10000mデビュー戦で初対戦は非常に名誉なこと。ハイレは尊敬する偉大な選手だが、レースになればライヴァル同士。勝って悪いとは思わない。トラック経験がないのでハイレについて行くことを考えていたし、勝つレースに徹した。」と、表情も変えないでケニシア・ベケレは語る。

ハイレ・ゲブレセラシエに最後のスプリントで競り勝って26分53秒70で優勝。トラック種目でもクロカン同様に稀有な才能を証明した怪物ランナーの片鱗を証明した。

6月1日、恒例の欧州屋外シーズンGP緒戦、第22回ヘンゲロ大会が開催された。オランダの東に位置する人口1.8万の町は、長距離世界記録製造競技会として知られている。

ハイレは1年ぶりのトラックレース。今大会最大の焦点は、ハイレ・ゲブレセラシエとエチオピア若手選手よる10000m世界新記録、26分19秒への挑戦。

ハイレと10才若いクロカン世界選手権史上初の2冠、2連勝の偉業を達成したケニシア・ベケレの10000mトラックデビュー戦。

それに今季成長の著しいエチオピア選手権5000、10000m優勝者、あのベケレを海抜2400mで5000mを13分35秒30、10秒大差で勝ったシレシ・シヒナ(20歳)らの、エチオピア長距離新旧世代の対決レースだった。

大会2日前から急転した天候は真夏。気温は30度!大会のフィナーレを飾る10000mは19時15分スタート。陽はまだ高い。散水車でトラックに水を撒いたぐらいでは焼け石に水。

それでもペースメーカーはラップ64秒で飛び出した。2500mを過ぎてから、シヒナ、ハイレ、ベケレらの先頭集団は、R.リモ、メズゲブ、ゲブレマリアム、G.トラらに大きく差を広げた。

しかし、ハイレが先頭で4000mの通過タイムが10分39秒72。彼自身の持つ世界記録スプリットより約10秒遅い。シヒナの5000m通過記録は13分22秒72。ハイレの6000m通過記録は16分06秒50と、すでに15秒ビハインド。暑さが少しずつ影響を及ぼし、ハイレが先頭に立って懸命に若手を引っ張るが、次第に3選手のペースが落ちてきた。

ベケレは「1周半ぐらい先頭に立ったが、経験のない10000mレースなので、後半7,8000mはどのような走りができるか全く予想できず、怖くなって後方に下がったんです。ハイレについて勝つには、どこでタイミング良くスパートするかチャンスを待った」と、無表情にレースを分析する。

一方、ハイレは「負けたの残念だ。ケニシアは強く、負ける可能性は予期していたが、まさか現実に、あそこで(スプリント)で負けるとは思わなかった。(笑う)これで世界選手権前、十分なスピード練習が必要なことがわかった。」と、アッサリ敗戦を認めたが、世界タイトル奪回ターゲットは確定したようだ。

そのほか男子800mでウイリフレッド・ブンゲイ(22歳、ケニヤ)が、今季世界最高記録2分43秒05で圧勝。

1マイルはジェ−ムス・クワリア(ケニヤ)が3分50秒39のジュニア世界新記録で優勝。これまでの記録はノア・ジェニン(ケニヤ)が97年6月16日に出した3分50秒40だった。

3000m障害でも、ポール・コエチ(21歳、ケニヤ)が五輪優勝者のルーベン・コスゲイ(23歳、ケニヤ)と激戦、今季世界最高8分6秒68で優勝。

男子砲丸投げで、欧州選手権に続き、室内世界選手権でも優勝したマニュエル・マルティネス(29歳、スペイン)が20m88を投げて優勝。今年も好調のようだ。

女子5000mは、99年エチオピアクロカンジュニア代表だったエルヴァン.アベレゲッセ(20歳、99年、トルコ人と結婚したためトルコ籍)が独走。大差をつけて、ベニタ・ジョンソン(23歳、オーストラリア)ロルナ・キプラガットイ(28歳、ケニヤ)らを押さえて15分6秒75で優勝。14分台を突入は時間の問題。

走り高飛びで心境著しいマリア・クプツオワ(21歳、ロシア)が自己新記録2m02をクリアー、今季世界最高記録で優勝。高さを2m04に上げたが成功ならず。

欧州女子ハンマー投げトップ選手が勢ぞろいした。今季75m20を投げて絶好調のマニュエラ・モンタバン(24歳、フランス)は、世界新記録を期待されたが71m54を6投目に投げて優勝。

2003.7.10.return to home 】【 return to index 】【 return to athletics-index