【大男の”ノミの心臓”、小さな男の”太い肝っ玉”】
記者室でこんな話を耳にした。

エドモントンで開催された世界陸上選手権大会開幕2日前。日本陸連から公式に、ハンマー投げ優勝候補の室伏宏治選手(27才)の記者会見が翌日に行われることを交付した。その日、室伏親子が設けられた席に腰を降ろすやいなや、父親が開口一番「試合が近づいてきたので、選手にプレッシャーを避けて質疑応答はコージに代わって私が致します」と、一方的に通告したらしい。
男子ハンマー投げで銀メダルを獲得した室伏広治

「オットト!!これは一体なんだ?!親父さんの話を聞くための記者会見ではないぞ!」その傍で息子のコージが、傍聴している奇妙なシーンだらしい。記者会見をしますといっておきながら、かれの親父が代弁する前代未聞。どうやら、あのデカイ身体をしていながら、未だに「乳(父)離れ」していないようす。記者会見も彼らの仕事のひとつ。とかく最近、日本スポーツ選手は、とんでもないばかげた「勘違い」を平然と行う。「スポーツ選手はプレーするだけ」と思っているアンチャンたちが多い。言葉足らずで、それ以外の表現の訓練、能力も大きく欠如している。サッカー選手の中田、小野などは、もちろん取材するほうにも問題が少なからずあるだろうが、日本人記者と話すことを極端に避ける。そんな選手に限って提灯記事を書く人か、外国人記者か、大金を払う会社を選んで笑顔で取材許可を出す。アホもいい加減にしろ!

コージは父親と同席、傍聴するだけでもプレッシャーは掛かるだろう。しゃべるのが嫌なら始めから記者会見を拒否すれば済むこと。出席しなければ良いだろう。誰もがこんなおかしな記者会見を納得しない。息子に掛ける「元鉄人」の過保護の親バカ振りにも呆れたが、息子の大きな身体に「ノミの心臓」か?

まだある。決勝の日、ぼくはフィールド内でハンマー投げの選手を撮っていた。コージはほかのカメラマンの中から日本人のぼくをいち早く見つけ出す。過剰に厳しい表情で「近寄るな!」とばかりに睨みを利かせる。しかし、外国人カメラマンには滅法寛容だから笑っちゃう!顔見知りの五輪優勝者、シモン・ジョルコフスキは、ぼくと目が合うと「にこり」として親指を立てた。その直後、シモン5回目の投擲は83.38mの自己新記録を樹立。あわや優勝かと思われたコージを一挙に逆転する勝負強さを見せつけた。

男子400mHで銅メダルを獲得した為末大
一方、日本男子400mH決勝レースで、小柄の為末が予想以上に大活躍で3位!!目立つスピード、体力があると思えないが華麗なハードリング、度胸ある積極的なレースで銅メダルを勝ち取ったのは特筆される。快挙だ!この種目でメダル獲得は並大抵のことではない。47秒89の日本新記録だ!喝采を送りたい。為末の本領は、スタートから思い切って小気味良くぶっ飛ばす。それがシドニーでは、トップを快走していたがハードルを引っ掛けて転倒した苦い経験があるが、今期は欧州GPでもコンスタントな結果を残してきた。「大きなレースになるほど、またはプレッシャーが掛かるほどやる気が出ます!」ローザンヌ、パリGPで、むしろ「プレッシャーを掛けてくださいと!」 と言わんばかりの明るい男。肝っ玉は大きい。世界選手権後、日本に飛んで帰らず欧州競技会を転戦した。ちょっと違ったタイプが出てきたのは楽しみだ。
2001.7.20.return to home 】【 return to index 】【 return to athletics-index