【 パリ、ボストン、ロンドンマラソンに思う】
恒例の4月の海外春季マラソン3レースを取材した。同じマラソンでも、大会カラーが三者三様に違う。現フランスシラク大統領が、パリ市長のころ、NY、ロンドンに追い越せ追い抜けの指示で始まったパリマラソン。今年は武井が参加、小幡も走る予定が急遽取り消し。パリは寒い小雨が降り出した悪い天気だ。ラップ計測、選手名の曖昧さ、ゴール前、表彰指揮の混雑などで取材疲れがする。フランス的な曖昧さ、イイかげんな主催がカイマ見える。ケニヤ選手が男女とも優勝した。第105回目を迎えたボストンは、レース作りに創造性が乏しい。大量のケニヤ選手が出場、ケニヤ国内選手権のようだ。近年マラソンスピード化が急速に進んでいるが、ここボストンは名だたる起伏の激しいコース、好記録は望めない。若い世代のランナーは、伝統、世界一の賞金額より、記録への攻敢な挑戦を求める。かつて世界の強豪が集まった記者会見では、レース前からピリピリした雰囲気、取材する側も緊張したのを覚えている。しかし、今回は2年ぶりの取材。記者会見に取材者が少なく、笑顔のツーリスト(選手)がチェックを受け取りに集まったようなのんびりムード。ところが、いざレースが始まると、李鳳柱が一人でレースを熱くした。力強い走りで『心臓破りの丘』をものとせず大胆にも揺すぶりを掛けた。レースの主導権を握り、冷静なレース展開でケニヤ11連勝を阻止。韓国人選手ボストン50年振りの優勝を飾った。金大中大統領は、祝電を入れ、空港からソウル市内まで凱旋パレード。大統領に食事に招待され国民的英雄の待遇を受けたという。女子はデレバ(ケニヤ)1児の子連れ母親が圧倒的な強さで2連勝した。

ロンドンマラソン男女優勝者とブレアー首相

ロンドン、ベルリン、シカゴの3大マラソンは、記録への挑戦、高額な出場などで急激に日本人選手、監督等の間で人気高揚。マラソンもハヤリがあるらしい。ロンドンは、シドニー五輪後初マラソンの犬伏、広山が参加した。犬伏は日本男子トップ選手が、高地練習で調整したのは始めてのケース。犬伏は長い距離の練習不足、広山は故障で一時はレース出場取り止めを真剣に考えたと言う。いずれにせよ、2人ともレース前から不安と不調を訴えていた。ロンドン最大の注目は、長距離史上最速のトラック、ロード選手、クロカン世界選手権5連勝したポール・タガート(ケニヤ)がマラソン転向、初レースだ。マラソンヴェテランのピントらの影が薄くなった。


ボストンマラソン、心臓破りの丘で
マラソンの予想は難しいもの。ツルが5レースめで2時間23分57秒で初優勝、2位は自己記録を3分短縮したザクハローワ(ロシア)。男子は、ダークホースのエル・ムアジズ(モロッコ)が、タガ―ト等を35kmで時点で、突き放して2時間07分10で優勝。タガートは2時間08分14秒で初マラソンを2位で大喜び。犬伏は7位、2時間11分41秒。広山は、精彩なく12位、2時間29分01秒だった。20世紀の歴史の創始者(優勝者)を全員招待、瀬古、谷口、ワキウリ、おじいさんになったS。ジョーンズらが、新世紀の初マラソン祝った。

(↑講談社・陸上競技社・月刊陸上競技誌2001年6月号掲載)
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