【男子5000m、ベケレ対ケニヤ勢の一戦】

昨年、20歳のベケレが史上初の世界クロカン2冠を達成した。自他ともに認めるクロカン王国ケニヤにとって最大の屈辱だった。今年もベケレはケニヤ勢の猛烈なチャージを退け、世界クロカン2冠2連勝を達成した。

文字通り"強敵が強敵を生む"はめになった。この2年間ケニヤのコーチ連は強敵"エチオピア"潰しに躍起になったと言う。

今回の5000mだけは選考会の結果を自動的に選考している。 中でも、猛練習で知られる元3000m障害世界記録保持者M・キプタヌイが手塩に掛けたチェビイが頭角を表した。あまりにもキプタヌイの猛練習の激しさに脱落者続出したと言う。

チェビイは00年世界クロカンショートコースで優勝した才能の持ち主。昨年GPファイナル3000mの最後のラップが50秒68!!(ベケレは5000m最終ラップが52秒64)最後の200mは23秒台を記録したスピードが武器だ。

トラックでブレークを起こしたのが、今年のパリGL5000m。残り200mを25秒00のスピードでケニヤの宿敵ハイレに競り勝って優勝した。 よほど嬉しかったのだろう。

チェビイはレース後にこう言った。「やっとエチオピア勢に一矢報いた。ハイレは史上最強選手。陸上界に偉大な貢献を果たしただが、この辺で若い選手に道を開けて欲しいね。」

続く、ローマGL5000mでもチェビイは、オスローで躍起になっても勝てなかったベケレ、ハイレに、最後の200mスプリントで完璧に制した。チェビイはここにきて俄然ベケレ、を押さえて優勝候補筆頭に踊り出てきたのは言うまでもない。

やはり同じ戦法でケニヤトライアルも制した。 チェビイは必死に先頭選手に食いつき離れない。勝負を掛けるのは、絶対的な自信を持つ残り200mのスプリント勝負に掛けるだろう。また、前回優勝したリモを含む4選手が代表。3人が12分台のランナーだ。エリュード・キプチョゲはまだ19歳! 

ベケレは、世界クロカン2種目、かつてのハイレがトライしたように5000、10000mの両種目にエントリーする可能性もある。そして勝つためには、オスローGLでチェビイらを破ったように、前半から速いスピードで相手を潰す作戦を取るだろう。 他の選手では、とてもこの2選手には太刀打ちができそうもないからだ。

いずれにしても、白熱したレース展開は必見もの。TVから目が離せない。

男子10000m、ベケレの優勝か?

「ハイレ王座奪回なるか?」の質問は、ハイレより10歳若いベケレが後継者として成長してきた現在、相当にネガティブな返答しかない。若いケニヤ勢が、若いがベテラン並みのレース巧者のベケレに対抗できるかが鍵だろう。

ローマでハイレはレース直後「トシかな。オレのスピードが通じないよ!なんとかしなけりゃあ。10000mではもう少しタクティカルナ走りが出きるんだが・・・」と。自分のことは良くわかっているようだ。

今までのように、速いペース展開でライヴァルを引っ張り、残り400か200mスプリント勝負で数々のレースを制してきた。 が、その作戦はベケレには通じない。

今季ベケレはトラックレースを走る前から、クロカンの2冠2年連続優勝のため、すでに世界的なスター選手だった。初の平地10000mで26分53秒70を記録してハイレを破り優勝、5000m12分52秒26を記録した逸材だ。

チェビイは「ケニヤに長距離選手はたくさんいる。この種目ではエチオピア選手が簡単に勝てるとは思えない」と言っているが、この距離ではベケレとハイレがケニヤ崩しをやってのけそうだ。

ハイレが5度目の優勝になるか、ベケレの初優勝なるか?いずれにしても、エチオピア選手の誰が出場しても、ペースの変化をつけたタクティカルな展開になろう。こうなると、若いケニヤ勢が勝つのは難しい。

このレース結果しだいでは、一世を風靡したハイレ・ゲブレセラシエ最後のトラックレースになる可能性もある。北京五輪はマラソンで優勝を狙うと言っていたが、案外、アテネでマラソン転向の可能性も生まれよう。

2003.7.29.return to home 】【 return to index 】【 return to athletics-index