【事後承諾か?衝撃的なラドクリフのマラソン世界最高記録の裏表】

4月13日、ロンドンマラソンでポーラ・ラドクリフ(29歳、英国)が、女子マラソン概念を根底から覆す衝撃的な2時間15分25秒で完走した。

01年、高橋尚子がベルリンで史上初のサブ20分で走った2時間19分46秒の記録も完全に色褪せる。日本選手とは5分の差、世界ただ一人のランナーとはいえ、日本マラソン関係者にはとてつもない衝撃的な記録だ。  

ロンドンマラソンディレクターD.ベッドフォードは、ラドクリフの絶好調を聞き、なりふり構わず地元で世界最高記録樹立のためのお膳立てに奔走した。来年は五輪の年、当然ラドクリフは春マラソン出場を控えるだろう。2年後はなにが起きるか誰も予測できない。

そこで生まれたアイディアは、ラドクリフに男子ペースメーカーを付け世界が"アッ!"と驚く世界最高記録を作ることだ。

2時間15分25秒は世界最高記録と報道されたが、実はこの記録は承認されていないかなりあやふやなものだ。

記録そのものは確かだろうが、前例がない条件で起きた経緯から、IAAFとロンドンマラソン主催者側の思惑違いが大きく生じているからだ。

レース前からラドクリフの世界最高記録一本槍。あたかも、かれらのアイディアに誰もが不振を持たない雰囲気だった。

周知のプレス担当ミカエル・ブッチャーに突っ込んだ質問をした。「ベッドフォードは3月17日、バーミンガムでIAAFディアック会長、ジュライ事務局長と会合を持ち、今回の件を提案したが即答は得られなかった。2回目は、ローザンヌで開催されたクロカン世界選手権大会の次の日、3月31日にモナコで同じような討議がなされたが、結果はなんら前回と変わらず。IAAFは規則違反の見解を述べている」

「そして、4月の初めダカールで開催されたIAAFの定期評議会で議論されたが、われわれの提案に回答は全くなかった。しかし、どうしたわけかタイムス紙が『ラドクリフに男子ペースメーカーをつけるのが許可され、記録は公式に承認される』と報道した。しかし、率直に言うと、われわれは今日(4月12日)までIAAFから正式に口頭または文書で明確な回答は一切なされていない」

レース終了2時間後、IAAFが送り込んだオブザーバー、カルロス・カルドス(ポルトガル)、広報ディレクター、ニック・デーヴィスらに聞くと、個人的な意見と前置きをして「これは混合レースとしてなんら変わりない。今日のレースを見る限り、混合レースとして認められるだろう」と言っているものの、興奮状態の中で彼等が非外交的なコメントを残すはずがない。

この時点でラドクリフの記録をIAAFが自動的に承認する条件そのものが成立されていない。もちろんコースの再計測など、いろんな条件をクリアーしなければならないが、前例がないレースだけにIAAFの動きがいまひとつすっきりしない。

今後、IAAFがこのレース条件をどのように承認するか注目したい。日本の女子マラソンは一体どこに行くのだろうか?女子マラソンと詠っている手前、日本では男子を走らせることは難しいだろう。この続きはボストン後にまた書く予定です。  

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